富山大学総合情報処理センター 広報 第2巻
Computing and Network Services
1998年2月号掲載
「インターネットから見るUNIXの世界」
はじめまして、私は今年度から本大学の理学部数学科の助手として採用となり、主にUNIXワークステーションの管理と情報教育を担当しています。富山へ来る前は、高知大学の情報科学科に在籍し、人間の手計算ではとても出来ないような膨大な量のデータを、コンピュータで処理することにより、数理構造の解析を行っていました。
今回は『インターネット活用術』というテーマですが、ここ数年は『インターネット』という言葉も広く社会に普及し、情報化という社会現象の中心的存在として、大学はもちろん、企業や情報教育が盛んになってきた小・中・高校などでも、コンピュータによるネットワーク環境が構築され利用されています。そして、インターネット上で流れる情報の8割以上がWWW(World
Wide Web)サービスによるものであると言われています。このような現状の中、皆さんもWebを中心にかなり活用され、活用術という事では、私の知らないような高度な利用をされている方も、たくさんおられることと思います。
余談になりますが、10年くらい前の話で、インターネットなどまったく知らない時代に、パソコン通信を体験したことがありました。当時は、モデムや音響カプラを使ってコンピュータ同志を接続していて、通信速度も300bps(1秒間に1と0の信号をやりとりできる数)とか600bpsといった大変遅いものでした。それはさて置き、この体験が、コンピュータの世界に深く足を踏み入れる原因の一つになったことを付け加え、今では、ネットワーク技術の向上によって、パソコン通信(インターネット接続)ではISDNによって64Kbps(64K=64000)とか128Kbpsという通信速度となり、LANではもうすぐ1Gbps(1G=1000000000)に到達しようというような勢いとなっています。このように、私が眺めてきたコンピュータの世界は日進月歩の勢いで、めまぐるしく発達してきました。
私はUNIXをよく利用するということもあるので、そちらに関係のある話をさせていただきたいと思います。もともとインターネットは、約26年前にARPAnetという米国国防総省ネットワークとして誕生し、このネットワーク最大の特徴であるTCP/IP(Transmission
Control Protocol/Internet Protocol)という通信規約を逸早く取り入れたオペレーティングシステムの一つであるUNIXによって成長し、現在利用されている形となりました。そして、この通信規約のもとでWWW・電子メール・ネットワークニュース・FTP・Telnetなど、様々なサービスが受けられるようになりました。上で述べたように、歴史的背景からもUNIXは深く関係していることがわかります。
では、実際にインターネットでUNIXによって、どのようなサービスを行っているのか、主なものを二つ紹介して行きますが、ネットワークの世界では、サーバ(サービスをする側のコンピュータ)とクライアント(サービスをされる側のコンピュータ)の2種類の立場があることを頭に置いて読み進めてください。
1つ目は、DNS(Domain Name System)で、これは皆さんが最も恩恵を受けているサービスです。ネットワークでは、それぞれのコンピュータを認識するためにIPアドレスという、人間社会では住所にあたるもが付けられていて、何らかのサービスを受けるときには、必ず必要になります。このIPアドレスはネットワークの中では数値(インターネットアドレス)で扱われていますが、これは人にとって解りやすいものとは言えません。そこで、DNSに助けられるわけですが、話を簡単にするためにWWWの例を挙げて説明していきます。仮にあなたが富山大学のホームページを見たいとします。所定の場所に『http://www.toyama-u.ac.jp』とURL(Uniform
Resource Locator)を打ち込まれることでしょう。このとき、クライアントであるあなたのコンピュータはDNSサーバに、『www.toyama-u.ac.jpというコンピュータのインターネットアドレスは何番ですか?』と聞きにいきます。するとサーバは『160.26.5.25です。』と教えてくれるのです。ここで少し実験したいと思いますが、URLとして『http://160.26.5.25』と入力してみてください。あら不思議、富山大学のホームページを同じように見ることができました。このように、対応するドメインネームwww.toyama-u.ac.jpとインターネットアドレス160.26.5.25を必要に応じて変換してくれます。
参考として、あなたが新しいコンピュータをネットワークに接続するとき、マシン名を申請するとドメインネームが決まり、情報センターからインターネットアドレスを発行してもらえます。また、自分のコンピュータにDNSサーバのアドレスを設定するときは、インターネットアドレスを打ち込むことになります。
2つ目は、NFS(Network File System)とNIS(Network Infomation Service)について紹介しますが、簡単に言えば、NFSによって資源を共有し、NISによって利用者を一括管理しようというものです。より詳しく言えば、NFSは、あるコンピュータのハードディスクを他のコンピュータで使えるようにします。そのため利用者から見れば、作成したデータの場所を意識しないで、どのコンピュータからでも編集でき、管理者から見れば、利用者の大事なデータをまとめて管理できるのでバックアップ作業を楽にします。さらに、NISと組合わせることによって、利用者はパスワードや環境設定を1回変更してやれば、他のコンピュータも同じ状態で利用でき、管理者もコンピュータごとに利用者を管理しなくてよくなり、統一性が図られることになります。このような利用方法は、WindowsやMacintoshでも盛んに取り入れられています。
このようにUNIXは、上で述べた2点を中心として、陰ながらインターネットを支えていることを記憶の片隅において利用していただければ幸いに思います。最後になりますが、今回話した部分は、UNIXシステムやインターネットのほんの一部分でしかありません。これから、もっとインターネットを活用しようと思われている方は、UNIXを含めて考えることによって、また違った見方や利用方法ができるようになるでしょう。
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